【特別対談】篠田英朗×千々和泰明
ロシア・ウクライナ戦争「終結のシナリオ」と新しい「安全保障体制」構築の道筋(下)

執筆者:篠田英朗
執筆者:千々和泰明
プーチン(左)ゼレンスキー(右)両大統領がサインに臨める和平合意はどのようなものになるのか (C)AFP=時事
和平合意へのプロセスは、紛争当事者それぞれが「将来の危険」と「現在の犠牲」を比較する中で進んで行く。ロシアとウクライナの総合的な国力の差を鑑みれば、国際社会が関与する形での保障体制導入も戦争終結のカギだろう。では、具体的な和平調停の内容として、どのような選択肢が考えられるのだろうか。(前編はこちらからどうぞ)

篠田英朗:私は開戦時から、軍事専門家はウクライナの敗北は不可避だと言い、歴史家はロシアの敗北は不可避だと言っているが、双方が正しいように見える、と言ってきています。

歴史的には“ロシアの敗北は不可避”

 侵攻当初から、軍事評論家の見立ては“ウクライナの敗北は不可避”です。ウクライナが戦場で局地的な成果を出した、持ち直したと言っても、総合的な国力と大量破壊兵器の存在を考えれば、ウクライナは決定的な勝利の手段を欠いている。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
篠田英朗(しのだひであき) 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。1968年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学大学院政治学研究科修士課程、ロンドン大学(LSE)国際関係学部博士課程修了。国際関係学博士(Ph.D.)。国際政治学、平和構築論が専門。学生時代より難民救援活動に従事し、クルド難民(イラン)、ソマリア難民(ジブチ)への緊急援助のための短期ボランティアとして派遣された経験を持つ。日本政府から派遣されて、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)で投票所責任者として勤務。ロンドン大学およびキール大学非常勤講師、広島大学平和科学研究センター助手、助教授、准教授を経て、2013年から現職。2007年より外務省委託「平和構築人材育成事業」/「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」を、実施団体責任者として指揮。著書に『平和構築と法の支配』(創文社、大佛次郎論壇賞受賞)、『「国家主権」という思想』(勁草書房、サントリー学芸賞受賞)、『集団的自衛権の思想史―憲法九条と日米安保』(風行社、読売・吉野作造賞受賞)、『平和構築入門』、『ほんとうの憲法』(いずれもちくま新書)、『憲法学の病』(新潮新書)など多数。
執筆者プロフィール
千々和泰明(ちぢわやすあき) 千々和泰明(ちぢわ・やすあき)1978年生まれ。防衛省防衛研究所主任研究官。大阪大学大学院国際公共政策研究科博士課程修了。博士(国際公共政策)。内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)付主査などを経て現職。この間、コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。専門は防衛政策史、戦争終結論。著書に『安全保障と防衛力の戦後史 1971~2010』(千倉書房、日本防衛学会猪木正道賞正賞)、『戦争はいかに終結したか』(中公新書、石橋湛山賞)、『戦後日本の安全保障』(中公新書)など。
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