【再掲】「非核三原則」と「核の傘」――1.戦略論を遠ざけてしまった「核の一国平和主義」

執筆者:千々和泰明 2023年12月25日
タグ: 日本 アメリカ
エリア: アジア
日本が非核政策を維持していることは、核保有国たるアメリカによる拡大抑止とセットだ[広島平和記念公園で献花後、原爆死没者慰霊碑を後にするウクライナのゼレンスキー大統領(左)と岸田首相=5月21日](C)EPA=時事
「つくらず、持たず、持ち込ませず」――非核三原則は長年、被爆国としての反核感情が凝集する「持ち込ませず」が焦点だった。だが、そこにまつわる日米間の「密約」が前景化するあまり、日本に提供される拡大抑止と核戦略をめぐる議論が不足してきたことは否めない。アメリカの核が撤去されたのは、それを日本国土に置くことが合理的ではなくなったからだ。なぜか? その理解は、東アジアの安全保障環境が激変しつつある現在にも、安易な核武装論や核持ち込み論を遠ざける重要な視座を与えるだろう。(〈2.「一時寄港」「沖縄」にまつわる二つの密約問題〉はこちらからお読みになれます) ※2023年5月29日公開の記事を再掲します

 

G7広島サミットと米韓「ワシントン宣言」

 第二次世界大戦で連合国側と枢軸国側に別れて戦った国ぐにの首脳が、78年の時を経て被爆地広島に集い、原爆死没者慰霊碑に頭を垂れた。さらに、広島出身の岸田文雄総理と、ロシアによる核兵器使用の脅しに現在進行形でさらされている被侵略国ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領が、やはり原爆慰霊碑の前に並び立った。

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執筆者プロフィール
千々和泰明(ちぢわやすあき) 防衛省防衛研究所主任研究官 1978年生まれ。大阪大学大学院国際公共政策研究科博士課程修了。博士(国際公共政策)。内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)付主査などを経て現職。この間、コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。専門は防衛政策史、戦争終結論。著書に『安全保障と防衛力の戦後史 1971~2010』(千倉書房、日本防衛学会猪木正道賞正賞)、『戦争はいかに終結したか』(中公新書、石橋湛山賞)、『戦後日本の安全保障』(中公新書)、『日米同盟の地政学―「5つの死角」を問い直す』(新潮選書)など。
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