接待に贈答に祝儀 風流とは無縁の中秋節

執筆者:竹田いさみ2006年11月号

 中国・上海市内のホテルやデパ地下で、真っ赤な化粧箱が並び始めたら秋の到来だ。箱には甘くずっしりとした月餅が詰め込まれ、なかでも高級月餅は贈答用として飛ぶように売れる。上海には日本企業が現在およそ五千二百社進出しており、日本人駐在員が出入りする高級ホテルやレストラン、デパ地下には、日本人好みの月餅が目に付きやすいところに陳列されている。 月餅は満月をイメージした平たくて丸いお菓子。中国では旧暦八月十五日の中秋節に月を見ながら食べるものだ。今年の中秋節は十月六日で、建国記念日の国慶節(十月一日)と近く、中国では大型連休となった。安倍晋三首相は十月八、九日、体育の日で連休となった二日間を利用して中韓を訪問したが、両国とも大型連休の直後だったため日程調整が可能になった。また韓国の盧武鉉大統領の十月十三日訪中が決まっていたため、日本としてはその前に安倍首相訪中を実現させなければならなかった。つまり、安倍首相は絶妙のタイミングで胡錦濤国家主席と会談したことになる。 中国には季節ごとに大切な年中行事がある。春節と呼ばれる旧正月、清明節、労働節、中秋節、国慶節などだ。春節や中秋節は旧暦を用いるため、毎年、カレンダーを確認する必要がある。今年の春節は一月二十九日だったが来年は二月十八日という具合に毎年異なる。中国に進出している日本企業の幹部は、着任以来、これらの年中行事が頭から離れないという。年中行事にこれほど悩まされるとは想像もしていなかったそうだ。

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