昨年末、トルクメニスタンの独裁者ニヤゾフ大統領(六六)が急死した。一時流れた「ロシアの陰謀説」に根拠はないが、「荒唐無稽」と即断できないほど微妙な問題が隠されているようだ。  後継を選ぶ大統領選挙は二月十一日。世界第五位の天然ガス埋蔵量を擁し、戦略的な要衝に位置するこの国の帰趨は、国際情勢に重大な影響を与える。  死因は「急性心不全」と発表された。もともと心臓に問題があり、一九九七年ドイツで心臓バイパス手術を受けている。だが、死の二カ月前は、昨年十月二十四日にドイツ人心臓専門医が率いる七人の医師団が定期検査し、「異常なし」だった。十一月初めドイツのシュタインマイヤー外相、同二十三日日本の斎藤泰雄駐ロシア大使と会談、死の三日前には欧州連合(EU)高官とも会った。健康悪化の情報は伝えられていなかった。  四〇年、首都アシガバートに生まれ、レニングラード工科大を卒業。八五年、旧ソ連トルクメン共和国の共産党第一書記に就任した。九〇年、初の大統領選で当選、九一年独立し「永世中立」を標榜した。自ら「偉大なるトルクメンバシ(トルクメニスタンの首領)」と呼び、自著を通じて個人崇拝を強制、嫌いなバレエや金歯を禁止した。

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