都会ぐらしの日本人は農業に対していろいろ誤解があります。たとえば、小規模農家は農薬や化学肥料を使わず、丹念に作物を作っているというイメージがあります。それに対して、大規模農家は農薬をじゃんじゃん使って薬品漬けの農作物を作っているのではないか――。しかし、日本の農業の実情は大きく異なります。

 

規模の小さい農家は環境に優しいか

 実際には環境にやさしい農業を行っているのは主に農業から収入を得ている規模の大きい「主業農家」といわれる人たちです。普段はサラリーマンをして土日だけ小さな田んぼで農業をしている小さな兼業農家は農業に多くの時間を割いている時間がないので、雑草や害虫駆除のため農薬を使い、化学肥料を多投するのです。規模の大きい農家ほど、農業に多くの時間をかけて環境にやさしい手間暇をかけた農業をやっています。

 本来であれば、アメリカ、オーストラリア、ドイツ、オランダ、フランスといった他の先進国のように、農業が大規模化して主業農家が増え、単位面積ならびに投下労働力に対する収量が高まっているはずです。日本でも、畜産や野菜などコメ以外の農業は主業農家中心です。それなのに、コメだけが生産性の低い「パートタイム・ファーマー」とでもいうべき兼業農家が主流になっています。それには理由があります。

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