年初に考える「農協」問題(上)  生命線は「減反制度」と「兼業農家」

執筆者:山下一仁 2015年1月11日
エリア: アジア

 都会ぐらしの日本人は農業に対していろいろ誤解があります。たとえば、小規模農家は農薬や化学肥料を使わず、丹念に作物を作っているというイメージがあります。それに対して、大規模農家は農薬をじゃんじゃん使って薬品漬けの農作物を作っているのではないか――。しかし、日本の農業の実情は大きく異なります。

 

規模の小さい農家は環境に優しいか

 実際には環境にやさしい農業を行っているのは主に農業から収入を得ている規模の大きい「主業農家」といわれる人たちです。普段はサラリーマンをして土日だけ小さな田んぼで農業をしている小さな兼業農家は農業に多くの時間を割いている時間がないので、雑草や害虫駆除のため農薬を使い、化学肥料を多投するのです。規模の大きい農家ほど、農業に多くの時間をかけて環境にやさしい手間暇をかけた農業をやっています。

カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
山下一仁(やましたかずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。1955年岡山県生れ。77年東京大学法学部卒業、同年農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年から現職。近著に『日本が飢える!』(幻冬舎新書)、『国民のための「食と農」の授業』(日本経済新聞出版)、『いま蘇る柳田國男の農政改革』(新潮選書)
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