台湾の民進党主席である蔡英文が今週、総統候補に立候補する党内手続きを行った。党内ではライバル視されていた蘇貞昌・前党主席も、頼清徳・台南市長も出馬をしないことを表明したため、蔡英文が民進党を代表して2016年1月に決まった総統選を戦うことが早々と確定した。

 思い出すのは2008年のことだ。当時の国民党は馬英九が立候補することが党内で早々にまとまり、一方の民進党は最後までもめたあげく、謝長廷と蘇貞昌が候補者の座を巡って争い、投票の結果、謝長廷が勝つには勝ったが、党内に残した対立の傷は最後まで癒されず、馬英九に歴史的大敗を喫した。

 今度は国民党が候補者を選ぶ番なのだが、まだ方向性は見えてこない。党主席になった朱立倫か、副総統の呉敦義か、立法院長の王金平か。いろいろ名前が取りざたされているが、すでにこの「中国の部屋」の「新党首『朱立倫』は国民党の救世主になれるか」(2015年1月22日)で書いたように、国民が一致するのは容易ではなさそうだ。

 民進党が蔡英文ですんなりまとまったのは、昨年の統一地方選による歴史的大勝によって、選挙を仕切った蔡英文の名声が一気に高まったのと、民進党が総統選で勝てそうだということで、それぞれの大物が「次」を考えて、ここは一歩引いておいたほうが得策だという思惑が働いたように思える。つまりは、立法院長(国会議長)や行政院長(首相)など、「蔡英文総統」から「下賜」されるポストのことを考えれば喧嘩を売っては得策ではないという計算である。

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