ほとんどの旧国立大学には、たいてい寄付講座というものがあります。正規の講座とは別に、企業や行政から寄付を受けてつくられる講座のことを言います。
 特に理系の場合には、学問がどんどん進歩して先端研究などを正規の講座でカバーするのが困難になってきており、近年、寄付講座の設立が多くなっています。

 大学は、独立行政法人化以降、資金のやり繰りには厳しいものがあり、新たな学問領域の研究を企業の寄付金によって実施できるので、寄付講座を大歓迎します。企業も、その成果が実るのは遠い将来になるかもしれませんが、先端の研究の進展に貢献しているというステータスをアピールできますし、自社製品の開発技術に応用する可能性も期待できます。
 したがって大学としては、開設自体にはリスクはないので、設立趣旨が正当で寄付金さえ集まれば、ほとんどの寄付講座が成立します。

 寄付講座をつくるには、最低2000万~3000万円ほどかかると言われています。なぜなら、特任教授、特任助教、特任講師などの人件費や、大学に対する負担金(大学公共設備の使用に伴う費用や大学本部への上納金)だけで、2000万~3000万円程度はすぐに消えてしまうからです。
 また、まったくゼロから講座をつくるのは難しく、必ず、寄付講座の人事や運営資金に責任を持ち、運営の面倒を見る親講座が必要です。日本経済が沈滞している現在、きちんとした成果の出せない講座は、寄付金が続かずに消滅したり、親講座の一部分になって受け継がれます。東大でも、これまでに、たくさんの寄付講座が誕生し、たくさんの講座が消滅していきました。
 そのようななかで、幸いにも、私がつくった3つの寄付講座は、良好な業績を出しながら、今も存続しています。3つの講座は、次の通りです。

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