四月八日、東京都知事選挙が行なわれる。告示は三月二十二日。原稿執筆時点で最終的な顔ぶれは分からない。事実上、三選を目指す石原慎太郎氏(七四)と、前宮城県知事で三月六日に出馬表明した浅野史郎氏(五九)の一騎討ちになるだろうが、東京都には、誰がトップになっても直面する大きな課題がある。 まず、新銀行東京をどうするか。石原知事が二期目の公約に掲げ、都民の税金一千億円を投入した「官業銀行」は、民間企業から出資金が思惑どおり集まらず、東京都が株式の八四%を保有する。開業から二年経っても赤字は膨らむ一方だ。二〇〇六年九月末時点で四百五十六億円だった累積損失は、この三月末には「六百億円前後に膨らむ」(都幹部)との見方もある。立て直す能力も気力もない都庁内や都議会からは「民間に売却すべきだ」という声がとうに上がり、東京スター銀行や東京都民銀行などの名前も取り沙汰されるものの、実際に買い手がつくかどうか。売却に際し、累積損失に加えて融資先の不良債権を引き当てれば、東京都の出資金が消え去りかねない。 貸し渋りに苦しむ中小企業への融資を考えた石原氏の心意気は買おう。しかし、公的資金投入で銀行は体力を回復し、貸し渋りは改善。目算が完全に外れた新銀行東京は二千億円の融資資金を遊ばせている。別の都幹部は「知事が三選したら、なんとか“延命”させようとするだろう」と推測する。根拠は、十六年前の前例だ。「バブルが崩壊し、当時の鈴木俊一都知事が進めた臨海副都心開発は抜本的な見直しを迫られたが、四選で見直しは先送りされた」。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。