ロシアが三月末、バルト三国のラトビアと懸案の国境画定条約に調印したことが、日露間の北方領土問題にマイナス影響を与えかねない。ラトビア側が「固有の領土」を放棄し、領土返還要求を取り下げたためだ。 ラトビアは第二次世界大戦中の一九四〇年、旧ソ連に併合された際、東部国境地帯の千六百平方キロを旧ロシア共和国に割譲。ラトビア側は二〇〇五年、ロシアのプスコフ州プイタロボ地区となった同地域を「固有の領土」として返還要求したが、プーチン大統領は「領土の代わりに死んだロバの耳をくれてやる」と猛反発した。 しかし、ラトビアが加盟する欧州連合(EU)はロシアとの早期国境画定を要求。ラトビア側は泣く泣く要求を取り下げた。エストニアも、首都タリンの旧ソ連兵記念像の撤去問題が決着すれば、領土要求を放棄して国境画定に応じる見込みだ。 近隣諸国との国境画定を急ぐプーチン政権は、中国やカザフスタンとは係争地を折半する面積分割方式で国境を画定。日本やバルト諸国に対しては「第二次大戦の結果」として返還や面積二分を拒否し、対応を使い分けてきた。「ラトビアとの協定を日本への圧力に利用する恐れがある」(外交筋)とみられ、日本外務省も警戒している。

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