「歯科医としての専門知識だけでなく、人と人、企業と企業をつないでネットワークを作ることなど、持てる力をすべて総動員して、このやりがいのある仕事に当たってきた二年間でした」――六月の離任を前に、仙台フィンランド健康福祉センター研究開発館初代館長のシニッカ・サロさん(四九)は語る。 センターは、高齢者の自立支援や在宅介護支援のために、IT(情報技術)を活用した付加価値の高い福祉機器やサービスを研究開発する目的で、二〇〇五年三月にオープンした(併設の特別養護老人ホームはその前年末に開所)。ビジネス拡大のためアジアの拠点を探していたフィンランド政府が、誘致に名乗りを上げた日本の自治体の中から仙台市を選び、提携がなった。フィンランド政府と企業、そして仙台市と地元企業および東北大学など地元大学が、共同開発のパートナーを見つけ、試作品を隣接の老人ホームで試して完成度を高めるという、世界でも他に類をみない研究施設だ。「日本同様、フィンランドにとっても少子高齢化は大きな社会問題です。しかも、日本とほぼ同じ面積ながらフィンランドの人口は日本の二十分の一以下の五百万人。日本よりも人里離れた土地で暮らす高齢者が多い。

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