中国版グラスノスチの微妙なせめぎ合い

執筆者:藤田洋毅2007年7月号

かつてゴルバチョフが進めたグラスノスチ(情報公開)は、結局、ソ連崩壊を呼んだ。中国メディアの巧妙な報道と、容認する指導部の思惑は……。「飲酒運転のドライバーを取り締まる際は、まず携帯電話を没収するのです」。北京市公安局の幹部は明かす。違反者には共産党・政府の幹部や企業家らが多い。彼らが「その場で後ろ盾の有力幹部に連絡し、公安局上層に圧力をかけて違反をもみ消すのを防ぐため」だという。「人民の不満は沸騰して」おり、見逃した後に事故でも起こしたら「私の首が飛びます」と幹部は続けた。おかげで北京では飲酒運転が着実に減っており、ドライバーを自宅まで送る代行運転業者が繁盛し始めた。「ところが一方で」と幹部はいう。「売春客を摘発する際は、絶対に携帯電話を奪いません」。まず「あなたは党員ですか」と問い、党員だった場合は「厄介ですね。ご存知のように、規定では党籍剥奪の可能性まであるのですよ」とささやく。さすがに「売春をもみ消すため後ろ盾にすがる幹部はほとんどいない」らしい。必死に弁解する客に、公安係官は指を立てる。「一本なら一万元、五本は五千元」だ。「手持ちの金がない」と訴える客には、「だから携帯電話は手元に残してあげたでしょう。お友達に連絡して、すぐに持ってきてもらいなさい」とやるわけだ。

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