サルコジ大統領の包容力テスト

執筆者:名越健郎2007年7月号

 フランスの大統領が74歳の老獪なジャック・シラク氏から団塊を一気に飛び越えて52歳のニコラ・サルコジ氏に代わった。 父はハンガリー移民、母はギリシャ系ユダヤ人という変り種。苦学して弁護士となり、頂点に上り詰めただけに、スローガンは「能力のある者が稼げる社会」。暴動を起こした移民を「社会のくず」とこき下ろした。「わたしは米国の友人だ」と公言する親米派で、早くも「ブレア英首相に代わるブッシュ大統領の新しいプードル」と揶揄されている。 停滞する社会・経済に競争原理を導入しなければ、米英主導のグローバリゼーションに取り残されるという危機感が有権者に働いたようだ。だが、伝統的に闘いに弱いこの国で、「強いフランス」の実現は難しい課題となる。 問 サルコジ氏の選挙勝利式典で花火が上がらなかったのはなぜか。 答 仏軍兵士が音を聞いて逃げ出す恐れがあったからだ。 問 仏国民が今回、親米派の大統領を選択したのはなぜか。 答 白旗を製造する工場が全焼したからだ。 サルコジ新大統領が国軍を閲兵し、演説した。「諸君のうち、わたしとともに祖国防衛に立ち上がってくれる者は手を挙げてほしい」 すると、全兵士が両手を挙げて歩き出した。

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