欧州の銀行買収合戦にまでチャイナマネーが姿を現わした。オランダのABMアムロ銀行の買収をめぐり、英銀ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)など三行連合と、英バークレイズ銀行が争っている。七月下旬、バークレイズは買収提案額に上乗せすることを発表。資金源は、中国の国家開発銀行とシンガポールの政府系投資会社テマセク・ホールディングスだった。 バークレイズは自社株最大一九%と引き換えに百三十四億ユーロ(約二兆円)の資金を捻出。欧米各国首脳は、アジアの国家ファンド(SWF=sovereign wealth funds)に対する不信感をさらに募らせたことだろう。「ソブリン・ファンド」とも表記されるSWFは、国家機関が外貨準備や年金資金などを元手に運用するもので、それ自体はあらゆる国が行なっている。だがドイツのメルケル首相は七月初旬、「EU(欧州連合)は規制を設けて、SWFが購入可能な金融商品を限定すべき」との見解を示した。欧州委員会のマンデルソン委員(通商担当)は、国家戦略に関わる企業が買収されないよう、黄金株(敵対的買収などへの拒否権付き株式)を導入するようEUに提案した。米財務省は国際通貨基金(IMF)に対し、SWFを対象にガイドラインを設定するよう求めている。

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