看過できない「利上げ誤報」の連続
2007年10月号
「これで二回目だな」「いや、サブプライム問題があるから、今回は不可抗力だよ」 日銀が「濃厚」と報じられてきた追加利上げの見送りを決めた八月二十三日、金融担当記者の間では、言い訳めいた会話が交わされていた。 日銀は景気の持ち直しを受け、昨年三月に量的緩和政策を、同七月にはゼロ金利政策を相次いで解除。そして、今年八月には三回目の金利引き上げを実施する可能性が高いと、新聞各紙がそろって報じていた。しかし七月下旬以降、サブプライムローンと呼ばれる米国の低所得者向け住宅融資の焦げ付きから、日米欧の主要株式市場が軒並み暴落。日銀は金利の据え置きを決め、前打ち記事はこぞって外れた。 誤報は今年一月にもあった。福井俊彦総裁以下、日銀首脳陣は公式・非公式の場で、国内景気の先行きに強い自信を示すとともに、景気拡大下で低金利を続ける弊害を訴えていた。マスコミの報道も「一月に利上げ検討」「利上げの公算が大きい」「追加利上げへ」とエスカレートしていったが、実際に利上げが実施されたのは二月だった。 量的緩和解除を含め、金融政策の変更はまだ三回なのに、誤報は二回目。だが、それは偶然や不運の産物ではない。原因は報道の構造そのものに内在している。
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