米中「蜜月」につのる台湾の不安

執筆者:野嶋剛2007年11月号

それでも陳水扁政権は米国の嫌う住民投票にまっしぐら。米中台の「現状維持」認識のズレは危険だ。[ワシントン発]「これは受け取れない」 米国防総省の担当者に、台湾から派遣された武器購入の交渉担当者が「レター・オブ・リクエスト」と呼ばれる購入依頼書を渡そうとすると、突き返される事態が続いている。台湾の担当者が食い下がって理由を尋ねると、指で天井の方を指して「上(ホワイトハウス)の意向」を示唆して、首を横に振る――。 台湾は米国から改良型F16戦闘機を六十六機、一括購入する方針を決め、六月の立法院(国会)で特別予算を通した。特別予算は十月末が執行期限。その前に米国から価格提示を受けられなければ自然消滅する。台湾側ではすでに焦りを通り越し、あきらめのムードが漂う。 台湾が主力機として一九九〇年代から保有するF16初期型は、中国が導入を進めるロシア製のスホイ30などと比べると、非有視界戦闘や電子戦などの分野で性能的に見劣りする。改良型F16の購入は米国と台湾の国防サイド同士が合意のうえで煮詰めてきたプランだった。 レターを受け取れば必要性は明らかなので前に進めなくてはならない。レターがなければ国務省やホワイトハウスは「書類が届いていない」と言い逃れできるわけだ。

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