産婦人科医不足に岩手県が投じた「一石」

執筆者:田中朝美2007年11月号

産科医のなり手がない。医師不足は特に地方で深刻だ。そこで岩手県はさまざまな工夫を凝らしている。「調子はどうですか?」――微笑みながら、流暢な日本語で患者に話しかけ回診する高嵩医師(三五)。岩手県盛岡市の岩手医科大学附属病院産婦人科に勤める中国人医師だ。 中国東北部の瀋陽市にある中国医科大学第二病院で産婦人科講師として活躍していた高医師が二〇〇六年二月に来日してから一年半が経った。同大学と岩手県との交流活動の一環としての来日ではあるが、中国人医師の招聘には、岩手県の「医師不足解消」という目的もあった。 岩手県の面積は北海道に次いで全国で二番目に広い。一方、人口は全国三十位の百三十七万人で高齢化・過疎化が進む。これに伴い産婦人科医や小児科医の減少に歯止めがかからない。県内の産婦人科医は二〇〇〇年から〇四年の間に二十六人減少して八十九人となった。県立病院二十七院(四診療所を含む)のうち十五病院に産婦人科があるものの、休診中の病院もあり、実際にお産が出来るのはわずか八病院に限られている。 広大な面積を持つだけに医師の偏在も顕著だ。盛岡医療圏以外の人口十万人あたりの医師数は百十五―百五十人の間を推移しており、全国平均の二百十一人をはるかに下回っている。

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