金正日の肥満に見る「政治性」と「危険性」

執筆者:黒田勝弘2007年11月号

繰り返し流れる健康不安説。今回の南北首脳会談でも見事な“太鼓腹”を披露したが、そこには奥深い理由がありそうだ。[ソウル発]七年ぶりに平壌で行なわれた第二回南北首脳会談(十月二―四日)における最大の印象は、金正日総書記の“太鼓腹”だった。その肥満ぶりは以前からのものだが、今回はそれがいやに目立った。平壌に到着した盧武鉉大統領を迎える歓迎式で、その張り出した太鼓腹がタテ、ヨコ、ナナメあらゆる角度からテレビに映し出されていた。 なぜ今回ことのほか目立ったかというと、顔や頭髪は年齢(満六十五歳)に比べ老けてみえ、さらに下半身もまた(ズボンの中だったが)その歩行ぶりから、それほどしっかりしているとは思えなかったのに、腹だけがパンパンに張り出していたからだ。 これは間違いなく異常である。彼の身長は百六十センチ台の前半と見られているが(靴がハイヒールになっていて実際より高く見える)、あの体形は実にいびつである。今、世界の指導者のなかであんな体形はどこにも見当たらない。 そしてナゾは、なぜ彼がその肥満をそのまま放置(?)しているのかということだ。 筆者(黒田)は彼と同年輩だが、近年、人間ドックなど定期健診のたびに医者からきまって言われるのは「体重を減らしなさい」である。彼に比べると肥満度は問題にならないくらい低いにもかかわらずだ。われわれの年齢からして、高血圧や糖尿、痛風などいわゆる成人病、今風に言う生活習慣病の最大の敵は肥満ではないか。そして医者は言う、「早死にしたくなければ体重を減らしなさい」と。

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