「宮崎元伸」が泳いだ防衛利権構造の黒い海

執筆者:伊藤博敏2007年12月号

なぜあれほどまでの接待攻勢をかけたか。外部からは見えにくい「利権の秩序」に食い込むには、生半可なやり方では通じなかったのだ。 宮崎元伸・日本ミライズ社長(六九)が持つ「私用」と「公用」の二つの携帯電話は、マスコミからの問い合わせと取材依頼で鳴りっ放しだった。 十月二十九日に行なわれた守屋武昌・前防衛事務次官(六三)の証人喚問の数日前、宮崎の心中を知ろうと取材した時のことである。筆者は宮崎と二人で遅い夕食を取っていた。 宮崎は必ず電話に出た。長話はしないが、聞かれたことには丁寧に答える。対応は終始穏やかだった。「今のは○×テレビの記者さんですが、『逮捕前インタビューを撮らせて欲しい』と、ストレートに言うんですよ。若いですな」 含み笑いを浮かべてこう言うのだが、その“若さ”をバカにするというふうでもない。 宮崎と会うのは十三年ぶりだった。前回は、AWACS(空中警戒管制機=一機五百五十億円)・UX(多用途支援機=一機四十億円)商戦で受注を連発する疑惑の専門商社「山田洋行」の辣腕経営者として取材した。今回同様、歓迎されざる訪問だったが、口は重くとも誠実な姿勢に変わりはなかった。 そして今回――。守屋喚問以降、宮崎はすべてのマスコミとの接触を断ち、十一月一日には日本ミライズ社長を辞任。その一週間後、東京地検特捜部は山田洋行時代の業務上横領などの疑いで宮崎を逮捕した。

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