永田町でスムーズに物事を運ぼうと思えば、事前の根回しが必要不可欠。内容に異論はなくても、得てして「俺は聞いていない」という一点で反対に回るのが政治家の習性である。他の政治家に対してはあったであろう根回しが自分になかったことにプライドを傷つけられ、「ここで賛成すれば今後も軽く扱われる」と計算を巡らせ、また「何か裏があるかもしれない」と勘ぐるのだ。 十一月二日夜の党首会談で、与党と民主党の大連立を視野に政策協議をスタートさせたいと提案した福田康夫首相に対して、「役員会を開き、まとめてきます」と自信ありげに答えた小沢一郎民主党代表は、そんな議員心理にあまりに無頓着だった。 午後八時前に終了した党首会談を受けて国会近くの党本部で開かれた民主党役員会。政策協議への了承を求めた小沢氏に、賛同する役員は皆無だった。相次ぐ反対論に業を煮やした小沢氏は「分かった。もうこの話はなかったことにしよう」と上気した顔で打ち切りを宣言し、直ちに首相に断りの電話を入れた。「せっかく誠意ある対応をいただいたが、党としては受諾できないという結論になった」。握手をして別れてからわずか一時間半。恥じ入るような口振りに無念さが滲んでいた。

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