蜜月過ぎて下り坂に入った中露関係

執筆者:名越健郎2007年12月号

パイプライン建設が頓挫すれば、武器輸出も白紙に戻る。あれほど滑らかに見えた中露の仲に、いまやささくれが……。 在京の中国大使館員がしばしばロシア批判を口にするようになってきた。ある中国外交官は筆者に対し、「中国が必要とする環境、省エネ、ハイテク技術はすべて日本にある」と日本経済を高く評価した上で、返す刀で「ロシアは資源を国策利用している」とプーチン政権の資源外交を批判した。 この外交官は「ロシアは資源だけ、米国は金融・サービスだけだ。額に汗して物づくりをしているのは東アジアだ」とも付け加えた。エネルギーを世界で買い漁る中国にとって、一バレル=九十ドル台に高騰する石油価格は重荷なのだ。中国は「東アジア共同体」創設を支持しているが、米露を排除した十一月二十一日のシンガポールでの第三回東アジアサミットは、資源に乏しい東アジアが製造業で結束し、産油国の横暴に対抗する好機でもある。 中国の外交官が、蜜月関係にあるロシアへの不満を漏らすほど、プーチン政権のエネルギー政策は目に余る。石油産業の国家統制、元石油大手ユコスの分割国有化、西側資本締め出し、ウクライナなどへのガス供給一時停止――ロシアのエネルギー資源国策利用も、エネルギー価格をここまで吊り上げた元凶の一つだ。

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