蜜月過ぎて下り坂に入った中露関係

執筆者:名越健郎 2007年12月号
エリア: ヨーロッパ アジア

パイプライン建設が頓挫すれば、武器輸出も白紙に戻る。あれほど滑らかに見えた中露の仲に、いまやささくれが……。 在京の中国大使館員がしばしばロシア批判を口にするようになってきた。ある中国外交官は筆者に対し、「中国が必要とする環境、省エネ、ハイテク技術はすべて日本にある」と日本経済を高く評価した上で、返す刀で「ロシアは資源を国策利用している」とプーチン政権の資源外交を批判した。 この外交官は「ロシアは資源だけ、米国は金融・サービスだけだ。額に汗して物づくりをしているのは東アジアだ」とも付け加えた。エネルギーを世界で買い漁る中国にとって、一バレル=九十ドル台に高騰する石油価格は重荷なのだ。中国は「東アジア共同体」創設を支持しているが、米露を排除した十一月二十一日のシンガポールでの第三回東アジアサミットは、資源に乏しい東アジアが製造業で結束し、産油国の横暴に対抗する好機でもある。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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