ロシア「トランプ懐柔ミッション」の中心人物、K・ドミトリエフの人脈図

執筆者:名越健郎 2025年4月27日
タグ: ロシア
ドミトリエフ氏の強みはプーチン氏との緊密な関係だが、ロシアのSNSでは「トランプの代理人」といった批判も多い[ドミトリエフRDIF総裁=2024年7月9日、ロシア・モスクワ](C)EPA=時事
プーチン大統領の側近、ロシア直接投資基金(RDIF)のドミトリエフ総裁は、米国の名門大学で高等教育を受けた大富豪であり、トランプ政権との交渉に水面下で深く関与しているとみられる。ドミトリエフ氏自身は停戦に前向きとされるが、「影の外相」などと称される振る舞いには批判もあり、ラブロフ外相率いる外務省との軋轢が報じられた。

「ウクライナ停戦」を公約に掲げるドナルド・トランプ米大統領が、停戦交渉から手を引く構えをみせ始めた。マルコ・ルビオ米国務長官は4月18日、ロシア、ウクライナ双方に「最終案」と称する仲裁案を提示し、「平和への道筋が見えなければ、米国は仲介努力を断念する」と警告した。

 米側は一方で、対露関係改善に着手し、ウクライナへの新たな軍事援助要請を無視。関税問題で欧州との対立が拡大している。ロシアの評論家、フョードル・ルキヤノフ国立高等経済学院教授は「ロシアは何もしていないのに、クレムリンにとって望み通りの展開だ」と評価した。

 だが、ロシアが何もしなかったわけではなく、トランプ政権懐柔に水面下で動いた立役者が、ウラジーミル・プーチン大統領側近の投資家、キリル・ドミトリエフ直接投資基金(RDIF)総裁(50歳)だ。米国で高等教育を受け、トランプ陣営に人脈を持つドミトリエフ氏は「プーチンの秘密兵器」「影の外相」といわれる。今後、要職への就任が噂される同氏の実像に迫った。

クシュナー氏と連携、米露非公式接触をお膳立て?

 ドミトリエフ氏はロシアに時々現れる天才肌の人物だ。ソ連ウクライナ共和国科学アカデミーに属した生物学者を父親に、1975年キーウで生まれた。冷戦末期、米ソの若者の留学生交換に選ばれて米国に留学。西海岸の名門スタンフォード大を首席で卒業し、ハーバード大ビジネススクールでMBAを取得した。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 拓殖大学海外事情研究所客員教授。1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所客員教授。国際教養大学特任教授、拓殖大学特任教授を経て、2024年から現職。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)、『ゾルゲ事件 80年目の真実』(文春新書)など。
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