
ドミトリエフ氏の強みはプーチン氏との緊密な関係だが、ロシアのSNSでは「トランプの代理人」といった批判も多い[ドミトリエフRDIF総裁=2024年7月9日、ロシア・モスクワ](C)EPA=時事
「ウクライナ停戦」を公約に掲げるドナルド・トランプ米大統領が、停戦交渉から手を引く構えをみせ始めた。マルコ・ルビオ米国務長官は4月18日、ロシア、ウクライナ双方に「最終案」と称する仲裁案を提示し、「平和への道筋が見えなければ、米国は仲介努力を断念する」と警告した。
米側は一方で、対露関係改善に着手し、ウクライナへの新たな軍事援助要請を無視。関税問題で欧州との対立が拡大している。ロシアの評論家、フョードル・ルキヤノフ国立高等経済学院教授は「ロシアは何もしていないのに、クレムリンにとって望み通りの展開だ」と評価した。
だが、ロシアが何もしなかったわけではなく、トランプ政権懐柔に水面下で動いた立役者が、ウラジーミル・プーチン大統領側近の投資家、キリル・ドミトリエフ直接投資基金(RDIF)総裁(50歳)だ。米国で高等教育を受け、トランプ陣営に人脈を持つドミトリエフ氏は「プーチンの秘密兵器」「影の外相」といわれる。今後、要職への就任が噂される同氏の実像に迫った。
クシュナー氏と連携、米露非公式接触をお膳立て?
ドミトリエフ氏はロシアに時々現れる天才肌の人物だ。ソ連ウクライナ共和国科学アカデミーに属した生物学者を父親に、1975年キーウで生まれた。冷戦末期、米ソの若者の留学生交換に選ばれて米国に留学。西海岸の名門スタンフォード大を首席で卒業し、ハーバード大ビジネススクールでMBAを取得した。

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