二〇〇八年の干支は「ねずみ」。老若男女を楽しませてくれるディズニーランドの「マウス」たちは、入園者の応対にてんてこ舞いであろう。 日本のディズニーランドでは、ミッキーマウス、ミニーマウスなどお馴染みのキャラクターたちが、入園者と握手したり記念撮影に応じることはあっても、直接会話することはない。しかし旅先で見かけた自称ミッキーやミニーの着ぐるみたちは、なんと片言の英語も喋る。どうみてもウサギなのだが、マウスだと言い張る。しかも訛りが入ってミニーならぬ「マニー(お金)」と聞こえた時には、耳を疑った。まさかそんなことはないだろう、と思い直してみたものの、着ぐるみが右手を差し出し囁いた言葉は、まがうことなく「マネー(お金)」だった。 この椿事の舞台は、いまや閑古鳥が鳴く香港ディズニーランドでもなければ、中国・北京郊外にある、あの偽ディズニーランド「石景山遊楽園」でもない。インドネシア・ジャカルタ郊外にあるテーマパーク「タマン・ミニ・インドネシア・インダ」のディズニー・コーナーだ。あえて日本語に直すと「美しいインドネシアのミニチュア公園」となる。 ここは、スハルト元大統領の夫人が庶民のためにと構想し、一九七五年にオープンした。入園者の大半は近隣の低所得者といわれ、従業員が賃上げを求めてストライキを起こしたこともある。オランダのデン・ハーグ近郊にある元祖ミニチュア公園「マドゥローダム」をイメージして行くと、見事に裏切られる。どこを見てもミニチュアはなく、インドネシア全土から集められた民族家屋が、実物大で整然と並べられている。高架式モノレールや子供用電車が走り、まさに庶民の遊園地として、週末には家族連れで賑わう。

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