昨年の欧州議会選での大躍進、その後の世論調査での好調ぶりと、最近は向かうところ敵無しだったフランスの右翼「国民戦線(FN)」が、思わぬ内紛で立ち往生している。前党首で現名誉党首の父ジャン=マリー・ルペンと、現党首の娘マリーヌ・ルペンとの間の確執だ。きっかけは、反ユダヤととれる父親の発言。これを、党勢拡大の支障になると見なした娘は、父親の征伐に乗りだした。今年12月の地方選で当選が有力視された地域の候補から父親を外し、意気消沈した高齢の父親は入院――。フランスの各メディアが伝えるてん末である。

 父娘2人の態度の背景には、右翼ポピュリズム政党が抱えるジレンマが横たわっている。大衆に迎合することなく、右翼本来の思想の旗を掲げてコアな部分での影響力を保つか。現実と妥協して大衆の支持を集め、政権への道を目指すか。つまり、父が高級路線を、娘がカジュアル路線を目指したどこかの家具会社の「骨肉の争い」と重なる構図なのだ。今回の出来事は、右翼の伝統に固執した「高級路線」の父親が、大衆に訴える「カジュアル路線」の娘に鉄槌を下された、と読み解くことができる。

 フランスの右翼の歴史を振り返りつつ、騒ぎの本質と今後の行方を考えてみた。

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