マスメディアでは報道されなかった「幻の要人来日」がある。6月28日から30日にかけて予定されていた、南アフリカのシリル・ラマポーザ副大統領の来日計画だ。滞在中は安倍晋三首相との会談や、早稲田大学での講演、日本貿易振興機構(JETRO)のビジネスフォーラムへの出席などが予定されていた。筆者も財界関係の行事で、お目にかかる予定であった。
 来日は6月9日に関係機関に通知があり、日本政府や財界を中心に受け入れ準備を進めていた。ところが、来日まで10日を切った6月19日になって突然、南ア政府から日本政府に対し、訪日中止が伝えられたのである。

 ラマポーザ副大統領は昨年11月末にも来日を予定していたが、日本側が解散総選挙に突入し、直前に取りやめになった経緯がある。来日が確定し、関連行事の準備がほぼ終了したにもかかわらず、2度も続けて要人訪問が中止された例は、あまり聞いたことがない。今回の中止の理由は「南ア側の内政上の理由」とされている。

中国との蜜月

「内政上の理由」の詳細は後述するが、外交の世界では通常、国家元首の往来が最重要である。しかし、少なくとも日本にとって、今回ラマポーザ副大統領の来日は、そうした外交の常識に収まらない重要な意味を持っていた。それは次のような事情による。

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