内なるイスラム原理主義勢力にたじろぐパキスタン情報機関「ISI」
2008年3月号
昨年十一月、パキスタンのムシャラフ大統領が「文民」の大統領となり、兼任していた陸軍参謀長を辞任した。その後継の陸軍参謀長には、腹心のアシュファク・キアニ将軍が就任した。 そのキアニ将軍が二〇〇五年七月、日本政府の招きでひそかに来日していた事実はあまり知られていない。当時は、軍の情報機関、三軍統合情報部(ISI)長官だった。 パキスタンの「核開発の父」カーン博士は北朝鮮にウラン濃縮技術を供給。他方、パキスタンは北朝鮮から推定十二―二十五基のノドン・ミサイルを導入している。日本政府としては、北朝鮮の核兵器開発の現状だけでなく、ノドンの正確な性能も知りたかった。 日本側は、当時の兼元俊徳内閣情報官らとの夕食会を催すなどして情報を探ったが、成果はなかった。キアニ将軍が明らかにした情報より「新聞報道の方が詳しかった」(在京外交筋)ほどで、日本側はひどく失望した。 各国の情報機関同士の協力は「情報交換」が不文律だ。だが、日本側からの情報提供はあまりなく、その分見返りもなかった。 キアニ将軍は、同じく大統領腹心のナディーム・タージ将軍にISI長官を引き継いだが、実はいま、ISIは危機的な状況を迎えている。
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