PKKが今度は「イスラーム国」に自ら報復

執筆者:池内恵2015年7月23日

トルコの治安に不安の影が差している。「イスラーム国」によるクルド問題の刺激と、トルコ政府とクルドとの対立の激化が危惧される。7月20日のトルコ南東部スルチュでの自爆テロに対して、PKKなどクルド民族主義勢力は「イスラーム国」ではなくエルドアン政権の責任を追及しているという話を先日伝えた。また、スルチュのテロへの報復としてPKKがトルコの警官2名を自宅で殺害するという挙に出たことも伝えた。

今度は、PKKが自ら「イスラーム国」関係者を21日に殺害していたと声明を出した。しかもイスタンブールで。クルド人が多数を占めるトルコ南東部やシリアとの国境地帯ではなくて。

トルコ政府が「イスラーム国」に本気で対処すればイスタンブールでテロもあるかも、とは想定していたが、PKKがイスタンブールで「イスラーム国」相手のテロをやることができるとなると、トルコの治安のリスクを以前よりずっと高めに想定しないといけないのかもしれない。トルコを舞台にクルドと「イスラーム国」がそれぞれ武装して宗教・民族紛争、となると、シリアやイラクと構図としてはあまり変わりない。もちろん現状では遥かに、遥かにイスタンブールは安全ですが。しかし中東では交渉や対立は実力行使を加えながら行われる厳しい現実を忘れてはならない。日本の常識で「対話しよう」などといっても、無駄なことが多い。そのあたり、よく知っておくようにしましょう。

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