ここ数日流れている情報。ターリバーンの指導者ムッラー・オマル(オマル師)が、パキスタンで2−3年前に死亡していたとする報道。アフガニスタン政府も29日、公式に確認作業に入ったと認めた。米側は確認できないとしている。ターリバーン元幹部の話として、結核で死亡したとする説も流れている。

“Afghan sources say Taliban leader Mullah Omar is ‘dead’,” al-Jazeera English, 20 July 2015.

オマル師はアフガニスタンを1990年代後半から2001年まで支配したターリバーン政権の精神的指導者として、「アミール・ムーミニーン(信徒の指導者=カリフの別名)」を名乗ってきており、アル=カーイダの主要な指導者たちはターリバーンに匿われてきたので、正式にはこの「カリフ」に忠誠を誓う立場にある。

ただし9・11事件以後は地下に潜りほとんど姿を表すことはなく、生死が分からなくなっていた。昨年以来、アフガニスタンにも「イスラーム国」支持勢力が現れて、一部の現場司令官が「イスラーム国」に鞍替えする事象も生じている。また、オマル師がいなくても、アフガニスタンの土着のターリバーン勢力は独自に勢力を維持している。そのため、オマル師の死が確認されても、アフガニスタンの文脈では大勢に影響はないが、むしろ国際的なジハード運動の中では、これで大手をふるって「イスラーム国」の「カリフ」に忠誠を誓って鞍替えする動きが加速するかもしれない。

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