女優として舞台に立つ傍ら、弁護士としても活躍した推理作家――。栗色の髪に緑の瞳のシゴレーヌ・ヴァンソン(41)は、その華やかな肩書から想像しにくい地味なたたずまい、内気そうで穏やかな話しぶりの女性である。

 フランス中部リヨン郊外に生まれ、電力企業で働く父の仕事の都合で少女期の約6年を東アフリカのジブチで過ごした。帰国後はパリ郊外に暮らし、俳優養成学校に通って舞台女優としての経歴を積んだ。日本でも公開されたダニエル・トンプソン監督の2006年の映画『モンテーニュ通りのカフェ』に端役で出演している。

 一方で、パリ第1大学に通って法律を学び、弁護士資格を取得して生計を立てた。2007年には友人の外科医フィリップ・クランマンとの共作で推理小説『青い医療メス』を発表し、冒険小説賞を受賞。以後著作に専念し、2011年には単著の小説『子どもの頃の国から逃げて』を刊行した。有名作家というほどではないものの、新作を出せばメディアが注目する作家である。キュッシュ・ディベト警視なる名探偵が活躍する共作の推理小説はシリーズになり、ポケット判で再刊された。

 彼女は、2012年9月から風刺週刊紙『シャルリー・エブド』に司法コラムを連載していた。その編集部で1月7日に体験し、後に『ルモンド』紙などに語った内容は、彼女自身のどんな小説よりも数奇で、現実離れしたストーリーだったに違いない。

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