産業としての競馬の可能性

執筆者:吉崎達彦2015年9月19日

 最近は夏の終わりが早い。残暑の季節に妙な長雨やら台風が相次いで、しまいには堤防決壊に伴う洪水まで招いてしまった。被災された方には衷心からお見舞い申し上げたい。

 が、それはそれ。ようやく秋らしい天気になってきた。そして先週末からは秋競馬が始まっている。筆者も主戦場たる中山競馬場に参戦しなければならぬ。

秋競馬が始まった中山競馬場内。

 日曜日、常磐線各駅停車の上り列車に乗って、新松戸駅で乗り換える。ここでエスカレーターに乗っている人々のうち、筆者も含めた少なからぬ比率が競馬新聞を手にしている。ああ、なんと恥ずべき光景であろうか。が、そんなことは言っていられない。武蔵野線に乗り換える間も惜しんで、赤ペンを手に今日のレースを検討する。最近はiPadで移動中に情報をチェックできるので、電車の中が勝負なのである。

 それにしても、自分はなぜ週末ごとに競馬場に通っているのか。最近の競馬場には、若いカップルも増えている。中山の馬場内公園などは家族連れで一杯だ。しかし多数派を形成しているのは、どう見ても自分よりも年上のベテランファンたちである。この人たちが競馬場に来られなくなったら、競馬は確実に衰退していくだろう。
 俗に「ギャンブルは不況に強い」などといわれる。ただし近年の日本経済においては、まったく当てはまらない。JRAの売上の推移をご覧願いたい。1997年度の4兆円をピークに緩やかな減少が続いている。震災があった2011年度の2.3兆円をボトムに、ちょっとだけ回復して2014年度は2.5兆円、というのが現状である。

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