この「国際機関の部屋」では国連や国際機関に関わる時事的なテーマとは別に、筆者が実際に国連で業務に携わったイラン制裁について、9月にForesightで掲載された記事で書ききれなかったことをいくつかのテーマに分けて論じる予定としている。

特権的な地位

 今回は国連安保理による制裁とは何かについて解説してみたいと思う。国連安保理は国連の中で特権的な地位にある。それは国連憲章第25条で「国際連合加盟国は、安全保障理事会の決定をこの憲章に従って受諾し且つ履行することに同意する」ことが定められているからだ。つまり、安保理の決定は全ての国連加盟国を拘束する。国連総会は加盟国に対して勧告的意見を出すにとどまり、各国がどのように対応するかは裁量の余地が大きく、安保理の決定は裁量の余地が小さいと言える。

 また安保理は国連憲章第7章で「強制措置」を取ることが出来る。日本では第7章の強制措置を「安保理に授権された武力行使」に着目してみる傾向が強いが、経済制裁など、武力を伴わない「強制措置」を取る方が一般的である。安保法制を巡って議論された国連による「集団安全保障」は、この国連憲章第7章に基づいて行われるもので、経済制裁もそれに含まれるが、安保法制の議論では集団安全保障に対する議論も深まらず、ましてや経済制裁についての議論は全くなかったのは、残念なことである。

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