レバノンの首都ベイルート南郊のブルジュ・エル・バラージュネ地区で連続自爆テロが行われ、少なくとも37名が死亡、180名が負傷した(後の報道では43名死亡・200名以上が負傷とも伝えられる)。

「イスラーム国」が犯行声明を出している。【Reuters】【BBC】【The Guardian

3名の自爆犯のうち2名がパレスチナ人、1名がシリア人とする報道もある

ブルジュ・エル・バラージュネ地区は、ベイルート国際空港の北側に位置し、民兵集団を抱えるシーア派組織ヒズブッラーの支持勢力の拠点として知られるハーラト・フレイク地区に隣接する。住民は地方から移住してきたシーア派が多いが、ベイルートのスプロール地帯であるがゆえにスンナ派やパレスチナ系の貧困層も多く住む。パレスチナ難民キャンプもある。レバノン内部やシリア・パレスチナ・イスラエルを含む地域紛争の激化に応じて衝突が生じやすい地区である。

ハーラト・フレイク地区からベイルート国際空港に至る、ヒズブッラーの勢力基盤となっているベイルート南郊地域の情景については、ジル・ケペル(池内恵訳)『中東戦記 ポスト9・11時代への政治的ガイド』の83−88頁に印象的に描かれている。多様な宗派・民族構成を抱える中東社会の理解には、街区や階層の特性を読み解くことが必須である。訳注でも詳細に構図を解説しておいたので、ご興味のある方は参照していただきたい。

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