フランスでイスラーム主義について研究してきた学者といえば、ジル・ケペルと並んでオリヴィエ・ロワである。アフガニスタンのジハード主義者たちの研究を基礎に、グローバルなイスラーム共同体観念の再強化など、現在の事象を読み解く背後の構造的変化を着実に早期に捉えてきた。

パリの同時多発テロ事件に対して、ロワがニューヨーク・タイムズに寄稿している。

Olivier Roy, "The Attacks in Paris Reveal the Strategic Limits of ISIS,"  The New York Times, November 16, 2015.

(フランス語原文はOlivier Roy, "Les attentats à Paris révèlent les limites de Daesh") 

フランスの知識人が、ジハード主義勢力の実態を踏まえつつ、フランスの政策を批評した、なかなか面白い視点である。

テロを受けて、フランスはオランド大統領が「イスラーム国」によるテロを「戦争行為」と形容し、あたかもシリアやイラクの「イスラーム国」の拠点を殲滅して根源を断つかのような発言をする。しかし実際には、これまで通りの空爆を、メディアに公開して印象づけるという以上のことはまだできていない。

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