[カイロ発]エジプトのアレクサンドリアと首都カイロを電車で往復しながらすごしている。昨年十二月に始めたアレクサンドリアでの在外研究も三月末で切り上げて日本に戻らなければならない。年末から一月は東地中海一帯に冷たい雨が続き、エルサレムの大雪やカイロの長雨といった異常気象が続いたが、二月半ばからは毎年恒例のハムシーンと呼ばれる砂嵐がやってきて、大気は乾燥し、暑くなってきた。 滞在中にたまった新聞を見直して、ここ数カ月の出来事を思い返しているうちに、時代が一回りしたという気分になった。一月十八日の完全封鎖で緊迫を高めていたパレスチナのガザ情勢は、二月二十九日にはイスラエル軍による大規模侵攻が開始され、多数の死者を出している。この状況は「一昔」前を思い起こさせる。「遺産形成」を目指した挙句 中東の「一昔」は八年で区切るといいかもしれない。八年前の二〇〇〇年といえば、米大統領選挙でブッシュとゴアが最後まで接戦を繰り広げた。筆者自身も長引く米大統領選挙開票のニュースを衛星放送で横目に見ながらカイロで調査に励んでいたことを記憶する。 きわどい勝利を収めたブッシュが翌年に大統領に就任し、その後半年ばかり後の九月十一日の米同時多発テロ事件によって、中東への深い関与に彩られたブッシュ政権の八年が決定づけられた。そのブッシュ時代が終わりに近づいているいま、中東政治のさまざまなところで「一回り」「一区切り」がめぐってくるのも当然なのかもしれない。

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