パリの同時テロについて、しばしば「組織性」が論じられる。しかし私はこれには慎重である。

というのは、「イスラーム国」そのものへのリクルートにしても、「イスラーム国」に共鳴しその活動の一部であると主張されるテロを決行する集団へのリクルートにしても、通常の意味での「組織」は依然として見えてこないからである。

組織があるとすれば、それはかなりの部分、家族・親族(従兄弟、そのまた従兄弟といったつながり)の紐帯と重なっているだろう。そのようなネットワークを「組織」と呼ぶのであれば組織と言えるだろうが、組織を成り立たせる前提を、血縁や盟友関係のような紐帯が提供しているため、指揮命令系統や情報伝達が私的な手段によって多くが担われ、よって察知されにくい。見知らぬリクルーターが組織的に勧誘して扇動・教育・訓練に誘い込むのであれば、勧誘を断った者たちから当局に情報提供がなされるだろうが、最初から閉ざされた私的関係の中で勧誘されるのであれば、外部から知り得る機会は限られている。

宗教教義の理念を掲げた過激な思想や行動様式が、モスクを通じてではなく、家族・親族・友人関係を通じて伝播され、動員の主要な経路となっているという組織原理上の特徴は特に重要である。

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