人民元が国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨に採用されることが確定した。米ドル、ユーロ、英ポンド、円に続く5番目の採用通貨になるが、構成比は中国の貿易量をベースに10.92%と決められ、一気に円、ポンドを上回る第3位の通貨となる。人民元は輸出入の決済など経常取引では自由化されているが、資本取引は中国政府が制約を加えており、完全に自由交換される「ハードカレンシー(国際決済通貨)」ではない。にもかかわらず、IMFは「広く使われ、広く取引されている」ことを根拠に、人民元はSDRに求められる自由度基準を満たしている、と判断した。

 

とことん面子にこだわる国

 人民元のSDR採用は中国政府が強く求めていたが、5年ごとに行われる2010年の前回見直しでは認められなかった。中国の狙いは、人民元が使われる地域、市場を拡大する「人民元の国際化」戦略にあり、そうした実利的な理由はもちろん大きい。だが、今回、習近平政権をSDR採用に突き動かしたより大きな動機は、「面子」だっただろう。外国人向けの中国ビジネス指南書には、必ず「中国人は面子を重視する国民」と解説されている。その応用として、「中国人社員は人前で叱ったり、恥をかかせたりしてはいけない」「中国人が欲しがるのは見た目が豪華で、大きな商品であり、質実でコンパクトな商品は中国では売れない」といったアドバイスが示されている。北京や上海のレストランでしばしば目撃するのは、支払いの際に「ここは自分が払う」と伝票を奪い合う中国人客の光景だ。それほど中国人は面子を重要視する。

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