年初に急激に高まったサウジ・イラン間の緊張は膠着状態に入った。

この問題から波及して注目すべきなのは、欧米メディアに表象されるサウジ・イメージの変化である。従来なら、欧米メディア、特に米メディアではイランこそが疑わしい、信用ならない、危険な存在としてかなりの先入観を持ってとらえられ、それに対してサウジは世界経済に安定的に石油を供給する信頼すべき同盟者として描かれがちだった。しかし、長いイラン核開発交渉を通じてイランの外交指導層と欧米との間の信頼が高まり、昨年7月の合意と、今年1月16日の合意の実施に至って、イランとの関係改善がもたらす経済関係や地域の政治的安定に資する役割への期待は高まっている。そこから、サウジこそが中東の混乱の原因と疑念の目を向ける論調が相対的に高まっている。石油価格低下でこれまでのような「ばらまき」による民心の安定が将来に望めなくなるという観測を背景に、年若なムハンマド副皇太子に権力が集中して王族内の結束が乱れかねないこと、イエメン内戦への強引な介入や、イランとの激しい軋轢を厭わないその手法がもたらす影響への危惧がしばしば表明される。もっとも注目されたのが、昨年の12月2日のドイツ連邦情報局(BND)のいわばサウジの政権そのものを含む国内外への「警告」ともとれる見解発表だった

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