シリア内戦をめぐって、サウジやイラン、米国やロシアを含む地域大国・超大国の交渉が続く。しかし世界の関心をよそに、別のところで内戦の危険性が高まっているのかもしれない。

中東で今現在問題になっている内戦といえば、多くはアラブ諸国の独裁的あるいは不安定・崩壊した政権の下で生じているものを指す。シリアや、イエメン、あるいはリビアでの紛争は内戦と認定され、国際社会が対処しなければならない問題とされる。

しかし昨年末にトルコのエルドアン政権が出してきた声明文は目を疑うようなものだった。トルコは2015年に3100名ものPKK構成員を殺害したというのだ。

"President Erdoğan: Over 3,000 PKK terrorists killed in 2015," Today's Zaman, December 31, 2015.

PKK掃討作戦はトルコ南東部と、イラク側に越境したPKKの拠点に対して行われている。

昨年7月20日のトルコ南東部シリア国境地帯の街スルチュでの「イスラーム国」によるものとみられるクルド人支援団体への自爆テロをきっかけに、PKKは「イスラーム国」だけでなくトルコ政府の責任を問うて武装蜂起に走り、トルコ政府とPKKは和平協議を放棄して紛争状態に逆戻りした。当初はエルドアン政権の「選挙対策」という批判も受けた対PKK掃討作戦は、短期間での終結が予測あるいは期待されていたが、9月以降エスカレーションを進め、トルコ軍とPKKの全面的な衝突へと転化してしまった。元来が対クルドで過酷な手法をとりがちなトルコ軍を、軍と必ずしも関係が深くないエルドアン政権がどれだけ統制できているのかといった問題も気にかかる。

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