「開いた口がふさがらない」とは正にこのことだ。整備新幹線がまたもや政治家のオモチャになっている。 旧臘七日、自民党本部で開かれた党の整備新幹線等鉄道調査会と整備新幹線建設促進議員連盟の合同会議は、三十分の予定をオーバー、一時間に及んだが、「財源がない」と説明する国土交通省幹部に森喜朗元首相が激怒。「財源を考えるのがキミたちの仕事だ」と怒鳴りつける声が響き渡った。一時間の大半が国交省に対する怒号に終始した。その後、政府・与党合同の検討会がもたれたが、財源の目途が立っていない未着工区間の整備新幹線建設に向けて検討会が開かれること自体、異例である。 昨年七月の参議院選挙で安倍晋三首相(当時)が金沢での遊説で「整備新幹線建設を年度内にしっかり検討する」と公約したのは確かだ。だが、参院選で自民党は惨敗、安倍首相は辞任したが、このままでは次の総選挙で大敗しかねないという“危機感”から、なにがなんでも整備新幹線建設を決めてしまおうというのが自民党の魂胆である。かねてから整備新幹線が「政治新幹線」と呼ばれる所以だ。 整備新幹線は一九七〇年に成立した全国新幹線鉄道整備法に基づく北海道、東北、北陸、九州二ルートの計五路線。財政悪化で八二年に凍結されたものの、見直しが繰り返され作られ続けてきた。二〇〇四年には北海道新幹線の新青森―新函館間、東北新幹線八戸―新青森間、北陸新幹線長野―金沢間、九州新幹線も鹿児島ルートの博多―新八代間の着工と完成前倒しを決定。並行在来線の廃止問題で反対が続いていた長崎ルートも昨年末に在来線存続が決まり、着工も間近だ。目下、永田町で騒いでいる整備新幹線は、この延長上の新函館―札幌と金沢―敦賀の二区間。建設費は二兆円が見込まれているが、財政再建が急務の国家にそんな余裕があるのだろうか。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。