台湾南部地震は高雄・台南の「双子地震」か

執筆者:野嶋剛2016年2月16日

 台湾の台南でビル倒壊を引き起こした地震には、いまだ解明されていない謎がある。それは、なぜ、隣の市である高雄市で発生した地震なのに、台南に被害が集中したのかという問題だ。いま台湾では、その原因について、高雄と台南の「双子地震」であった可能性を疑う声が地震の専門家の間から上がっている。

 

「余震」ではない「双子地震」

 地震発生後、台南市では複数のビルが倒壊し、特に永康地区にある「維冠金龍大楼」は、大型の14階建て集合住宅の9棟が一気になぎ倒され、住民100人以上が生き埋めになるという甚大な被害を起こした。すでに捜索活動は終了しており、死者は114人に達した。ほかの場所での死者2人をあわせて、今回の台湾での地震による死者は計116人となった。

 20年前にビルを建設した企業の経営者らが、手抜き工事の疑いで警察に身柄を拘束されており、「人災」である面も浮かび上がっているが、一方で、発生当初から関係者の間で議論されていた「なぜ台南の特定の地区だけに被害が集中しているのか」という問題にはいまも回答が出ない状態が続いていた。

 台湾メディアによると、台湾の地震学界の権威である馬国鳳・中央大学地球物理研究所教授兼台湾地震科学センター主任は、今回の台南での被害発生の理由として「双子地震」があったと見る見解を自身のFacebookに発表した。双子地震は、ほぼ同時に連続して発生する大規模な地震のことで、余震とは違う。最初の地震によって周辺の断層に大きな負荷が加わって連動した形で別の地震が起きることで、主震と余震の関係と違って、しばしば2つの地震には大きな規模の違いがないことなどを特徴としている。

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