ロシアがアルメニアへの軍事的なテコ入れを相次いで誇示して、トルコへの圧迫を強めている。ロシアは2月18日、アルメニアへの防空システムなど2億ドル相当の武器売却取引の詳細を発表した。2月20日にはアルメニアの首都近郊でトルコに近いエレブニ(Erebuni)空軍基地に5基のミグ29戦闘機などを追加配備したと発表した。3月半ばには試験飛行を始めるとしている

これらは昨年すでに明らかになっていた、ロシア・アルメニア共同でのエレブニ空軍基地を拠点とした防空システムの配備や、ギュムリ基地への地上部隊配備といった、ロシアのアルメニアへの軍事的関与強化策の一環とみられる。これがどの程度ロシアとトルコの間の戦力バランスを変えるか定かではないが、トルコに対する威嚇であり、またロシア国内・トルコそして米欧など第三者にも向けられた、ロシアの優位性の誇示の宣伝の情報戦という意味合いもあるだろう。

またアルメニアと対立するアゼルバイジャンに対する牽制でもある。ただしロシアはアゼルバイジャンにも大量の武器を売却している。

これが「トルコ・シリアを舞台とした第三次世界大戦の幕開け」といったおどろおどろしい劇画的な事態を招くとは即断できないが、それよりも「世界大戦」を避けるシステムとしての局地的な「冷戦」構造が中東において構築されつつあり、コーカサス南部からシリアにかけての地域が地政学的な競争の最前線となっていて、そこにトルコが挟まれて苦境に立たされていることは確かだろう。

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