アンカラの自爆テロで犯人について、エルドアン大統領やダウトール首相が事件後すぐに主張したシリア国籍のクルド人による犯行説と、PKK分派のTAKや、最近のトルコ治安当局高官のリークが示す、トルコ国籍のクルド人による犯行説が、真っ向から食い違っている。これによってトルコが主張するYPG犯行説は旗色が悪くなったが、トルコの立場が成り立たないものではない。トルコ国籍のクルド人アブデュルバーキー・ソメルがPKKあるいはその分派TAKに属しているが、シリアにわたってYPGで活動しており、シリア国籍のサーレハ・ナッジャールという偽名でトルコに入国してきたのであれば、トルコ政府の言い分も通る。異なる名前だが同一人物であるということだ。トルコ政府はそのような立場に傾いているようだ。ソメルの父が、トルコ政府が示したナッジャールの写真は息子と同一であると証言しているとも伝えられる。

これらの情報が正しいかどうかは別にして、そうであれば多くの当事者にとって都合がいい。もちろん、YPGやPKKは関係を否定し続けるだろう。

シリア内戦で顕著なのは、どの勢力も少しずつ嘘をついているということだ。

トルコはシリア北部に、アサド政権から逃れる市民を守るため、あるいは「イスラーム国」に対抗するために「飛行禁止区域」を設け「安全地帯」にすると提唱する。しかし真の狙いはシリアのクルド人勢力の支配地域が一体化することを避けるために楔を打つことにあるのは明白だ。トルコはテロに際しても即座にYPG関与を断定したが、出してくる証拠がどことなくとってつけた風だ。とにかくPKKもTAKも違いはなく、PKKとYPGも、YPGの政治部門PYDも、全く同じもので全てテロ組織だと主張するトルコの議論は大雑把であり、根本でのクルド民族抑圧政策の歪みが出ているとしか言いようがない。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。