伊能忠敬から学べること、学べないこと

執筆者:吉崎達彦2016年3月19日

 太平洋戦争が終わった直後に出生率が上昇し、結果として誕生したのが「団塊の世代」である。同じような現象はアメリカでも見られる。欧州戦線では戦争終結が少し早かったから、アメリカにおけるベビーブームは日本より早く1946年から始まっている。
 この1946年生まれからは、既にビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュという2人の大統領が誕生している。2人で合わせて実に16年もアメリカを統治してきたわけである。さらに今年は、もう1人の46年生まれが大統領を目指している。と言うと、ヒラリー・クリントンのことだと思う人が多いだろうが、彼女は夫のビルよりも1歳若い1947年生まれである。1946年生まれの第3の男とは、ドナルド・トランプのことである。いやもう、アメリカ版「団塊の世代」の元気さには深く敬服するほかはない。
 1946年生まれには、ほかにも映画監督のスティーブン・スピルバーグ、俳優のシルベスター・スタローン、FRB(連邦準備制度理事会)のジャネット・イエレン議長など、多士済々で賑やかな顔ぶれが並ぶ。ひとつ下の1947年生まれにも、前カリフォルニア州知事で現俳優のアーノルド・シュワルツェネッガーや作家のスティーブン・キングなどがいる。とはいうものの、歌手のデビッド・ボウイや作家のトム・クランシーはもう死んでしまっている。元気な人もいれば、そうでない人もいるというのが世の常である。
 ついでながら、米大統領選挙についてこんな心配をする人がいる。
「ヒラリー・クリントンが当選すると、2017年1月の大統領就任式時点で69歳になっている。これはレーガン大統領と同じで、果たして2期8年の激務が務まるだろうか?」
 これに対する模範回答が2通りある。ひとつは「1980年代の70代と、今の70代を比べるべきではない」、もうひとつは「男に比べれば、女の方がはるかに長生きである」。――いいんじゃないですか、クリントン大統領。少なくともトランプ大統領よりは。

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