ブリュッセルでの自爆犯2名は兄弟か

執筆者:池内恵2016年3月23日

今回もまた「兄弟」が犯行グループに含まれているようだ。

3月22日のブリュッセルの連続テロで、空港と地下鉄駅で自爆した実行犯のうち2名は兄弟であるとベルギーの捜査当局が明かしている。二人はハーリド・エル・バクラーウィーとブラヒム(イブラーヒーム)・エル・バクラーウィーで、先週のブリュッセル近郊でのジハード主義者の拠点の捜査先の一つの部屋をハーリドが偽名を使って借りていたという。サラーハ・アブドッサラーム容疑者の逮捕に結びついた捜索では、ハーリドが借りた部屋では一名が銃撃戦で死亡し、部屋からはサラーハ・アブドッサラームの指紋が、「イスラーム国」の旗や銃と共に、みつかったという。

「今回もまた」というのは、昨年11月13日のパリ連続テロでも、実行犯の一人で生き延びて先週逮捕されたサラーハ・アブドッサラームは、カフェで自爆したブラヒム・アブドッサラームの兄だったからだ。また、昨年12月2日のカリフォルニア州サンベルナルディーノの福祉施設で起きた銃乱射テロでは、犯人は夫婦だった。

ジハード主義者のリクルートは、モスクを舞台に過激な説教師によって行われるという通説があるが、これは不確かである。そもそもイスラーム教では多くの場合はモスクは単に祈る場所であり、稠密な社会的紐帯を築き組織化を行う場所ではなく、説教師の権限も大きくない。欧米の教会組織からの類推での、モスクでの過激派リクルートという仮説はさほど根拠なく通用している。モスクで過激な思想が広がるというよりは、すでに過激な思想を持ち、家族・兄弟・親友といった紐帯をすでに持つ集団が、同じモスクに通うということはあるだろう。しかしその場合は、公道を過激派グループが歩いていることとさほど変わりがない。「一味が共に公道を歩いていたから、公道がリクルートの場所だ」と言うことには、あまり意味がない。

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