アジア重視策の柱である環太平洋連携協定(TPP)の署名式も終え、国交を回復したキューバを米大統領として88年ぶりに訪問した。自ら主導した「核安全保障サミット」の最後の会合も世界の首脳を招いてワシントンで開いた――。

 2期8年に及ぶオバマ外交もいよいよ「まとめ」の段階に入ったところで、それを総括する長編の分析が老舗論壇誌『アトランティック』4月号に掲載され、米首都ワシントンでセンセーションを巻き起こしている。タイトルは「オバマ・ドクトリン」。

 なぜ、オバマはアメリカが「世界の警察官」であることを止める決断をしたのか。その論理は。その心理は。同誌のスター外交記者ジェフリー・ゴールドバーグがここ数年にわたり何度も重ねてきたオバマとの単独会見を基に政権幹部とのインタビューも加え、えぐり出す。同誌ではここ十数年来で最長という大型記事だ。【The Obama Doctrine, The Atlantic, April

 2013年8月、シリアのアサド政権が毒ガス・サリンを使用したとき、それまで毒ガス使用は「越えてはならない一線(レッド・ライン)だ」と強く警告していたオバマは、警告にもかかわらず武力行使に踏み切らなかった。それは、米大統領ひいてはアメリカ国家の「信頼性」を大きく揺るがした事件として、いまだに尾を引いている。

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