昨年から今年にかけて、パリとブリュッセルで「イスラーム国」やアル=カーイダに共鳴したテロが続いた。なぜ西欧の若者の一部が過激化するのか。その原因をめぐってフランスで論争が起きている。

 論争の当事者は、フランスの現代イスラーム研究の両巨頭と言えるジル・ケペルとオリヴィエ・ロワである。フランスの雑誌やテレビで行われている論争を、ワシントン・ポスト紙がまとめてくれている。

“Who becomes a terrorist, and why?,” The Washington Post, May 10, 2016.

 パリやベルギーのテロを実行した、西欧の郊外の移民系の若者はなぜ過激化したのか。正面から解釈すれば、イスラーム主義の過激な思想の影響が及んだと見るべきだろう。パリ政治学院教授のジル・ケペルは、1970年代末以来、世界各地のイスラーム主義の政治への影響を研究してきたが、ヨーロッパの「郊外」のイスラーム主義にも早くから注目してきた。イスラーム主義の中の「サラフィー主義」の潮流、特にそれと「ジハード主義」が結びついた潮流に、西欧郊外の環境で一部の若者が感化されている、というのがケペルの議論の根幹だ。

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