シリア内戦で反体制派がヌスラ戦線に結集か

執筆者:池内恵2016年5月26日

シリア内戦では、名目だけの和平協議がジュネーブで行われてきたが、アサド政権は任意の敵対勢力を「テロリスト」と認定すれば攻撃を続けられるという根本的な欠陥のある仕組みであるため、成果は望めない。和平協議の結果として進めることになっている和平プロセス、つまり(1)反体制派を含めた移行政権の樹立、(2)選挙、(3)新憲法の制定、という手順そのものをアサド政権が無視して選挙を行い、新憲法の制定もロシアの支援で進めているとも噂されている。そのため和平が進んでいることにしたい米国のために「やっているふり」をしていた、ジュネーブに集まった新欧米派の反体制活動家も業を煮やして会議の席を立ってしまった。

しかし和平会議の場に出たことで、新欧米派の反体制派は現地でアサド政権と戦っている諸勢力の支持を失ってしまったのではないかと危惧される。

予想されていたことだが、和平協議に反体制派の代表団が参加している間に、現地では戦闘が激化し、会議で成果を出せない代表団たちを捨てて、ヌスラ戦線などイスラーム主義勢力に合流していく兆候が見られる。

"Jihadists mobilize in Syria as peacemaking unravels," Reuters, May 19, 2016.

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