チュニジアのナハダ党が政教分離を掲げる

執筆者:池内恵2016年5月27日

チュニジアのナハダ党が5月20日から23日にかけて党大会を開いたが、そこで政教分離を方針として明確にし、イスラーム主義政党ではなくムスリム民主主義政党として党の理念を再定義したことが注目されている。

CNNのクリスチャン・アマンプールによるナハダ党の指導者ガンヌーシーへのインタビューが興味深い。

"Ghannouchi: Tunisia ready to separate politics, religion," CNN, May 23, 2016.

チュニジアは2011年1月のベン・アリー政権の崩壊で「アラブの春」の口火を切った。この年10月23日の立憲議会選挙で第1党となったナハダ党は、共和主義・左派系の2党との連立で政権を獲得、2014年2月に広範な合意による憲法制定が果たされた。

ナハダ党は新憲法の下での2014年10月の人民代議員選挙では第2党に後退し、11・12月の大統領選挙ではナハダ党が推した共和主義派のマルズーキー大統領の続投を阻まれ、旧政権系の政党「ニダー・トゥーニス(チュニジアの呼び声)」のセブシー現大統領が誕生した。しかしエジプトのムスリム同胞団・自由公正党とは対照的に、軍のクーデタなどは起こらず、大連立の政権にも参加している。選挙を通じた政権交代により、イスラーム主義政党の政権が誕生し、また平和裏に退いたという一連の民主主義のサイクルが完結したことは、アラブ世界では傑出した出来事である。

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