北朝鮮との国境・中国遼寧省丹東(タントン)市にある北朝鮮レストランで歌う従業員女性たち(C)EPA=時事

 

 そんな環境でも、Zの女性たちは努力を怠らない。睡眠時間を削り、がむしゃらに音楽の技術を磨き、外国語を学ぶ。

 連日、客がいなくなる午後10時すぎから、音楽担当指導員について、約5時間、歌や楽器の練習に励む。「ここで頑張れば帰国した後、国家が良い待遇をしてくれる」。高麗ホテル側は女性たちにこう説いているという。

 加えて、毎週末には中国語の試験も課せられ、成績下位の5人には「茶碗洗い」の罰が待つ。たかが「茶碗洗い」。だが「平等にやってきたのに数人だけが脱落して『茶碗洗い』をさせられる。耐えられない不名誉なこと」。こう支配人が解説する。

 さらに、彼女たちを縛るものが「生活総括」だ。レストランで週末に1回開かれる会議で、その週に自分たちがどう考え、どう行動して生活したかを報告する。金日成国家主席や金正日総書記の教えに沿って行動したか、党の方針に背いていなかったかなどを点検し、自己批判するのだ。

 レストランでは、自分が外国人客とどんな会話をしたか、他の女性が客と親しくしていなかったか、なども報告する。内容をめぐって女性同士が激しく言い争いすることもある。彼女たちが外国人客と会話する際、判で押したような言葉しか返さないのは生活総括での批判を恐れているためである。

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